風邪を早く治すコツは?
長引く原因もまとめて解説
Tips for dealing with colds- 監修:内田直樹(うちだなおき)先生
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昭和大学医学部 薬理学講座 臨床薬理学部門 教授
昭和大学卒。2014年4月より現職
日本臨床薬理学会 指導医・専門医
仕事が忙しい、大事な予定があるなど、1日でも早く風邪を治したいときも多いのではないでしょうか。しかし、数日ほどで自然に治癒する軽い風邪もあれば、症状が長く続いてしまう風邪もあります。ここでは、風邪が長引いてしまう原因と、なるべく早く治す対策を解説します。
風邪が治るまでは
どれくらいかかる?
平均で1週間~10日程度
風邪の原因となるウイルスの種類によって症状やその持続期間はさまざまであるため、風邪が完治するまでの期間は一様ではありません。
風邪の症状は、のどの痛み、くしゃみ、発熱やだるさ(倦怠感)で始まることが多く、続いて鼻水や鼻づまり、さらに咳や痰などがあらわれます。症状によって持続期間は異なり、のどの痛みや発熱などの引き始めの症状は発症2~3日目をピークとして改善していきます。一方、咳については、比較的遅くあらわれて長引きやすく、2~3週間ほど続くこともあります。
風邪は1~2日ほどで完治することは少なく、症状が長く続くこともありますが、普通の風邪であれば症状のある期間は平均7~10日間であることが複数の研究で報告されています。
風邪が治るまでには1週間~10日間ほどかかるものと考え、これより症状が長引くときには医師に相談するようにしましょう。
風邪が長引く原因
季節の変わり目
朝晩の寒暖差が大きくなる季節の変わり目に体調不良を感じることはありませんか? 温度差や環境の変化などのストレスによって自律神経がバランスを崩すと、だるい、疲れがとれない、眠れない、頭痛、めまい、のぼせ、冷えなど非常に多岐にわたる症状があらわれることがあります。
自律神経は免疫の働きにも関与しているため、自律神経の乱れは免疫力の低下を招く可能性もあります。免疫力の低下によって風邪が長引いてしまうことがないよう、季節の変わり目には注意が必要かもしれません。
別の病気が隠れている
風邪ではない他の病気が原因で、風邪に似た症状が続いていることがあります。風邪症状が長引く場合は、原因を調べて適切な治療を受けるため、早めに医師の診察を受けることが大切です。
- 発熱が長引く
風邪による発熱は発症から2~3日ほどで解熱することがほとんどです。発熱がこれより長く続いているときは、新型コロナウイルス感染症や肺炎といった他の感染症、悪性腫瘍・がん、膠原病などさまざまな病気が考えられます。高熱のときは感染症の可能性が高くなりますが、たとえ微熱であっても発熱が長引くときには医師に相談しましょう。 - 咳が長引く
風邪の咳は長引きやすいものですが、長引く発熱を伴い、咳や痰の改善がみられない場合は新型コロナウイルス感染症や肺炎などの他の感染症の可能性がありますので、早めに医師に相談しましょう。また、3週間以上も咳が長く続く場合は、咳喘息や気管支喘息、胃食道逆流症、COPDや慢性気管支炎、肺がんなど、感染症以外の原因による咳の可能性が高くなります。 - くしゃみや鼻づまりが長引く
風邪に似た鼻の症状が長引く病気として、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎などが考えられます。花粉症などのアレルギー性鼻炎では、立て続けに出るくしゃみやサラサラした水っぽい鼻水がいつまでも続くことが特徴です。副鼻腔炎は風邪のあとに悪化することが多く、濃い鼻水と鼻づまりが続き、頬や額の痛みや発熱を伴うこともあります。
免疫力が弱い
睡眠不足、過度な運動やストレス、喫煙、加齢、栄養不足などによって体の免疫力は低下します。免疫力が低下するとウイルスの排除が遅れて、風邪が長引きやすくなります。
特に高齢者は、加齢によって免疫力が低下しているだけでなく、持病を持っていたり症状に気づきにくくなっていたりするため、風邪が長引き、重症化や合併症を起こしやすくなります。風邪をきっかけとした細菌の二次感染も起きやすく、肺炎などを合併したことによる発熱、咳や痰の症状が長く続いている場合も多いため注意が必要です。
一方、子どもは風邪のウイルスに対する抗体などの免疫がまだ十分にできていないため、特に保育園や幼稚園などの集団生活に入ったばかりのころには、頻繁に風邪を引いてしまいます。小さな子ども(乳幼児)は風邪をきっかけとした中耳炎、気管支炎、肺炎などを起こしやすく、合併症による症状が長く続いていることがあります。
免疫力が弱い高齢者や小さな子ども(乳幼児)、持病などによって免疫力が低下した人は、健康な成人と比べて風邪が重症化しやすいため、早めに医師に相談することが大切です。
風邪を早く治すカギは、
免疫力にあり!
免疫力アップのコツ①睡眠・休養を
しっかりとる
風邪が早く治るかどうかは、体の免疫力にかかっています。風邪を引くと、体の免疫はウイルスを排除するために炎症を引き起こしたり体温を上げたりするなど活発に働きます。これによって体力も消耗するため、風邪を引いたら十分な睡眠と休養をとって免疫の働きを助けることが大切です。
発熱や咳などつらい症状のせいでぐっすり眠れないときは、風邪症状を和らげる風邪薬を試してみてもよいでしょう。
慢性的な睡眠不足があると免疫力が低下し、風邪などの感染症にかかりやすく悪化もしやすくなることから、日頃から良質な睡眠を心がけることも重要です。特に入眠直後の深い眠りが免疫の働きを高めると考えられていますので、夜遅くの食事やカフェイン・アルコール、電子機器の使用は控え、交感神経が鎮まりスムーズに眠りにつけるように睡眠環境を工夫してみましょう。
免疫力アップのコツ②体を温める
風邪を引くと体は体温を上昇させることで免疫の働きを活性化させて熱に弱いウイルスの増殖を抑えて排除しようとします。さむけ(悪寒)など、体温の上がりはじめのサインがあるときには、免疫の働きをサポートするために体を温めましょう。
風邪を引いたときの体の温めかた
- さむけ(悪寒)やふるえがあるときには、部屋や衣服を暖かくして体を温めましょう。
- ・乾燥する季節には部屋の暖房にあわせて適度に加湿しましょう。
- ・体温が過度に上がってしまわないように、厚着や布団で暑くし過ぎないようにしましょう。
- ・体を温める食べ物・飲み物(生姜、葱、根菜、シナモン、葛湯、紅茶、ココアなど)もおすすめです。
- 熱が上がりきって汗をかきはじめたら、衣服を薄くしたり、汗で冷えないよう衣服を交換したりしましょう。
- 本人が快適と感じられるような保温を心がけましょう。
過度に体温が高くなると免疫の働きがかえって阻害され、体力消耗と全身状態の悪化につながるため、高熱が出るときには医師に相談したり解熱薬の使用を検討したりすることも大切です。
免疫力アップのコツ③水分補給
発熱があると、発汗や蒸発の増加、食欲不振によって普段よりも水分が失われやすくなります。体調を維持して免疫力をサポートするためにも、風邪のときは水分補給が重要です。
風邪を引いたときの水分補給のコツ
- こまめに少しずつ、積極的に水分を摂る
- 食事を摂れないときは、経口補水液やスポーツドリンク、野菜スープなどで電解質も補給する(特に吐き気・嘔吐や下痢があるときには注意する)
- 利尿作用のある飲み物は避ける(コーヒー、緑茶など)
免疫力アップのコツ④栄養を十分に摂る
免疫の働きに必要な栄養素が不足すると、風邪が長引いてしまうかもしれません。免疫力に影響する栄養素として、ビタミンCやビタミンD、亜鉛などが知られています。
風邪を引くと発熱などによりエネルギーやビタミンの消費量が増えるため、糖質を中心としたビタミン豊富な食事で栄養を十分に摂ることが大切です。風邪のときは食欲も消化機能も低下しがちなので、たんぱく質は低脂肪で良質なものを選び、水分が多く消化の良い、薄味でさっぱりした食べやすい料理がおすすめです。
風邪のときの栄養について詳しくは、「風邪を引いたときにおすすめの食事は?コンビニで買えるメニューもご紹介」のページを確認してみましょう。
「急がば回れ」が結局有効
風邪を早く治してくれるような特効薬はありません。風邪が早く治るためには、ウイルスと戦う免疫の働きをサポートして体の回復を助ける、睡眠と休養、保温と加湿、栄養・水分補給といった基本的なケアがやはり大切なのです。
そして、風邪を予防するためにも、また風邪を引いても体が早くウイルスを排除するためにも、普段からの対策で免疫力を高めておくことが重要です。結局、風邪対策のカギは、「急がば回れ」の免疫力アップが有効と言えるのではないでしょうか。