つらい風邪の頭痛、なぜ起こるの?
原因や対処方法を解説
Symptoms - headache- 監修:内田直樹(うちだなおき)先生
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昭和大学医学部 薬理学講座 臨床薬理学部門 教授
昭和大学卒。2014年4月より現職
日本臨床薬理学会 指導医・専門医
頭痛には、風邪よる頭痛もあれば、放置すると危険な頭痛や「頭痛持ちの頭痛」と呼ばれるような慢性の頭痛もあります。ここでは風邪による頭痛の原因と対処方法、頭痛の原因として考えられる他の病気をご紹介します。
風邪のときの頭痛症状は
なぜ起こる?
風邪で頭痛になる原因、メカニズム
風邪などの全身の感染症が頭痛を起こすメカニズムはよくわかっていません。風邪のときの頭痛は、発熱と同時にあらわれることが多いのですが、発熱がなくてもあらわれることもあります。こういったことから、単に発熱が原因で頭痛が起きているわけではなく、炎症物質や血管の拡張・収縮など、さまざまな要因が影響していると考えられています。
起こりやすいタイミング、条件
風邪に伴う頭痛は、ぞくぞく寒気を感じたときや、発熱があるときによく起こります。風邪で熱が上がり関節痛や筋肉痛があるときにも、頭痛があらわれていることが多いでしょう。
また、風邪で鼻づまりがあるときに、頭痛や額、頬、鼻の周りの痛みを感じることもあります。この場合は、風邪による頭痛ではなく、風邪に伴って起きた鼻炎や副鼻腔炎によって痛みがあらわれているのかもしれません。副鼻腔炎による頭痛は、「風邪のせい?長引く頭痛には要注意!」で解説します。
風邪による頭痛の緩和方法、対処法
市販薬の服用について
頭痛に効果を発揮する解熱鎮痛成分は、市販の頭痛薬や風邪薬に配合されています。風邪による頭痛を和らげる目的で、これら市販薬を服用してもよいでしょう。
ただし、頭痛が非常に強い場合や市販薬を服用しても頭痛が改善しない場合は、頭痛の原因を調べて適切な治療を受けるために、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
市販薬を服用するときの注意点として、他の薬を服用している方、持病のある方、妊娠中の方、その他に心配なことがある方は医師や薬剤師に相談することも大切です。
風邪で起こる頭痛には頭痛薬?風邪薬?
頭痛薬と風邪薬の違いは、解熱鎮痛成分以外のところにあります。頭痛薬には、頭痛以外の風邪症状に対応する成分は入っていません。風邪薬には、解熱鎮痛成分に加えて、風邪であらわれる鼻水・鼻づまり、咳・痰などを和らげる成分が配合されています。
風邪による頭痛とともに他の症状も和らげたい場合には、ご自身の風邪症状にあった風邪薬を選択するとよいでしょう。風邪によるつらい症状が頭痛や発熱だけの場合は、頭痛薬を選択してもよいでしょう。
なお、風邪薬と頭痛薬はどちらにも解熱鎮痛成分が含まれ、同時に服用すると成分が重なり副作用を起こしやすくなるため、併用はやめましょう。
どんな市販薬の成分がおすすめ?
解熱鎮痛成分には、アセトアミノフェンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)など、成分によって作用のしかたが異なりますが、いずれも風邪による頭痛のほか、風邪による発熱、関節痛・筋肉痛、のどの痛みにも効果を発揮します。効果と副作用は成分によってさまざまですが、アセトアミノフェンが配合された風邪薬は子供にも使える製品が多いです。
市販薬に含まれる主な解熱鎮痛成分の
種類
- アセトアミノフェン
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs):イブプロフェン、アスピリン、ロキソプロフェン、エテンザミドなど
自分でできる、風邪による頭痛の
緩和方法
- 冷やして緩和する
頭を冷やすことで頭痛を緩和できる場合があります。氷まくらやタオルで包んだ保冷剤を、頭にあてたり頭の下に敷いたりしてみましょう。 - 頭痛にきく食べ物
緑茶、紅茶、コーヒーなど、血管を収縮させる作用のあるカフェインを含んだ飲み物で頭痛が和らぐことがあります。 - マッサージ、ツボ
頭痛には肩こりが原因となっている場合があります。頭痛を感じた時に、ひどい肩こりがある場合にはマッサージが有効な場合があります。
また、ひじの近くにある「手三里」、人指し指と親指の骨の合流点あたりの「合谷」、足の「崑崙」「足臨泣」などのツボが頭痛を和らげると言われています。
風邪のせい?
長引く頭痛には要注意!
その頭痛は風邪のせい?
頭痛を引き起こす病気は、風邪以外にもたくさんあります。頭痛が風邪によるものだと思っていたら、実は医師の治療が必要な他の病気によるものであったということも少なくありません。
次のような頭痛がみられた場合は、風邪による頭痛ではない可能性があるため、我慢せず早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
こんな頭痛には要注意!
(風邪による頭痛ではないかも)
- 突然発症した頭痛:バットで殴られたような頭痛(くも膜下出血など)
- 経験したことのない激しい頭痛
- どんどんひどくなる頭痛
- 意識障害や嘔吐・吐き気を伴う頭痛
- 風邪症状のあとの長引く頭痛(2~3日を超える):髄膜炎、脳腫瘍、副鼻腔炎など
なかでも、突然の頭痛、激しい頭痛やどんどんひどくなる頭痛、意識障害や嘔吐・吐き気を伴う頭痛は、危険な病気による頭痛の可能性がありますので、なるべく早く医療機関を受診してください。
風邪症状のあとの長引く頭痛
風邪以外の病気による頭痛のなかには、初期症状が風邪に似ているため、風邪による長引く頭痛と間違いやすいものがあります。また、風邪を引いたあとに細菌感染を起こしたことで、長引く頭痛があらわれている場合もあります。
風邪による頭痛は通常、発症から2~3日ほどで軽快します。風邪を引いたと思っても、頭痛が長引いている場合は、原因を調べるために早めに医師の診察を受けるようにしましょう。
風邪症状のあとの長引く頭痛の原因として、髄膜炎、副鼻腔炎、脳腫脹などが考えられます。
- 髄膜炎
髄膜炎は頭痛が発熱とともにあらわれ、風邪と間違いやすいため注意が必要です。風邪のような症状のあとに髄膜炎が発症することもあります。髄膜炎による頭痛は、どんどん痛みがひどくなり、意識障害や嘔吐・吐き気を伴うこともあります。「首が曲げにくい」と感じる症状が髄膜炎の特徴です。髄膜炎は、脳や脊髄を包む膜の中に細菌やウイルスが侵入するなどして炎症を起こした病気で、なるべく早く医療機関を受診する必要があります。 - 副鼻腔炎
風邪のあとの長引く頭痛の原因として多いのが、副鼻腔炎です。風邪はウイルス感染によるものですが、多くの場合、細菌感染が起こることで副鼻腔の炎症が悪化し、風邪が落ち着いたあとにも副鼻腔炎による濃い鼻水や鼻づまり、頭痛が続きます。副鼻腔炎による頭痛は、副鼻腔のある額、頬、鼻の周りに痛み感じたり、うつむいたり首を振ったりすると痛みがひどくなるのが特徴です。副鼻腔炎は慢性化してしまう場合もあるため、早めに耳鼻咽喉科で診察を受けることが大切です。 - 脳腫瘍
脳腫瘍でも長引く頭痛があらわれます。さまざまな症状が徐々にあらわれてくるため、はじめは風邪など他の病気による頭痛と思っているうちに、発見が遅れてしまうこともあります。
天気痛
風邪など他の病気が原因となって起こる頭痛(二次性頭痛)に対して、原因となる他の病気がなく、くり返し起こる慢性頭痛(一次性頭痛)があり、いわゆる「頭痛持ちの頭痛」とも呼ばれています。
天気痛もその一つと考えられ、朝晩の温度差、台風による気圧の変化といった気象の変化が誘因となり頭痛などがあらわれる方がいます。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は男女かかわらず、日本人に最も多い慢性頭痛です。机に向かってパソコン作業を長時間行うなどの身体的ストレスや精神的ストレスが原因となり、頭から肩にかけての筋肉が緊張して神経を刺激し、後頭部から首筋にかけて締め付けられるように痛みます。
女性特有の頭痛
片頭痛は20~40歳代の女性に多い慢性頭痛です。頭の片側または両側のこめかみから目にかけてズキン、ズキンと脈打つように痛みます。痛みは数時間から3日ほどで消えていきますが、月に何度も発作が起こり強い痛みや吐き気・嘔吐のため日常生活に支障をきたします。
片頭痛のなかには、女性ホルモンが影響して月経周期に伴い発作を起こす、女性特有の片頭痛のタイプもあります。