風邪で熱がでてしまったときはどうすればいいの?
正しい対処法は

Symptoms - fever
内田直樹(うちだなおき)先生
監修:内田直樹(うちだなおき)先生

昭和大学医学部 薬理学講座 臨床薬理学部門 教授
昭和大学卒。2014年4月より現職
日本臨床薬理学会 指導医・専門医

発熱は体がウイルスなどと戦うため体温を上げることで起こります。他のさまざまな病気でも発熱がみられるため、熱が出たら風邪によるものか見極めることも大切です。風邪で熱が出たときの対処法を確認してみましょう。


発熱などの風邪の症状は
どうして起こるの?

ウイルスを排除するために免疫が活性化

風邪の原因となるウイルスなどに感染すると、ウイルスと戦い排除するために体の免疫の働きが活性化します。活発になった免疫細胞が、ウイルスが侵入した組織に集まりサイトカインという炎症物質を放出して炎症を起こします。

放出された炎症物質が、発熱などの全身
症状を引き起こす

風邪により鼻の粘膜で炎症が起きるとくしゃみ、鼻水や鼻づまりが、のどの粘膜で炎症が起きるとのどの痛みなどの風邪の症状が出るようになります。
さらに、炎症物質が血流にのって全身に届くと、発熱、頭痛、筋肉痛・関節痛といった全身症状があらわれるのです。

風邪によって発熱が起こるメカニズム

免疫細胞などから放出された炎症物質は、他の免疫細胞を活性化してウイルスに対する抗体を作ることを促すなど、ウイルスを排除するために働いています。
同時に、炎症物質のプロスタグランジンはサイトカインによって産生が促進される物質の一つであり、脳にある体温調節中枢に作用して、体温の設定を高くします。すると体温調節中枢は設定された温度にあわせて体温上昇の指令を出し、熱を生み出すために筋肉を収縮させたり(ふるえ)、熱が逃げないように皮膚の血管を収縮させて(さむけ・悪寒)、体温を上昇させるのです。
体温を上昇させることで、免疫細胞を活性化したり熱に弱いウイルスの増殖を抑えたりしていると考えられています。

風邪による発熱では、ウイルスを
撃退しようと体温を上げている

風邪による発熱で、ウイルスを撃退しようと体温を上げているイメージ図

風邪の症状がでてしまったときの
対処法

さむけ(悪寒)やふるえは風邪などによる発熱の前触れ

さむけ(悪寒)やふるえは、体がウイルスなどと戦うために体温を上げようとしている状態です。倦怠感、筋肉痛・関節痛など風邪による全身症状も前後してあらわれてくるかもしれません。さむけ(悪寒)やふるえを感じたら、風邪などによる発熱の前触れと考え、早めに体を休めるようにしましょう。

熱はむやみに下げなくてよい

発熱があると、熱を下げなくてはと感じる方も多いかもしれません。しかし、発熱はなんらかの病気の兆候ではありますが、熱を下げれば病気が治るわけではありません。
風邪による発熱では、体は体温を上昇させることで侵入したウイルスの増殖を抑えて排除しようとしています。発熱を無理に抑えると、体のウイルスを排除する働きを妨げ、かえって風邪の治癒を遅らせてしまう可能性があります。
発熱しているときはつらい全身症状も多いですが、熱はむやみに下げるのでなく、保温を心がけ、安静と水分・栄養補給などによりウイルスを排除する免疫の働きを助けるようにしましょう。体がウイルスを排除して戦いが終わると、熱は自然に下がっていきます。

ただし、高熱(38度以上)が出る場合は風邪による発熱ではない可能性があるので、発熱の原因を調べて適切な治療を受けるために、早めに医療機関を受診しましょう。特に、赤ちゃんや小さな子ども、高齢者、妊婦などは、発熱で体力を消耗しやすく、感染症で重症化や合併症を起こしやすいため、早めに医師に相談することが大切です。

発熱があるイメージ

風邪による発熱は温める?冷やす?

  • 風邪の引き始め
    風邪の引き始めには、温めるのが正解です。さむけ(悪寒)やふるえがあり顔色が青白いといった風邪の引き始めのサインがあったら、部屋を暖かくし、衣服を多めに着て布団に入るなどして体温上昇を助けましょう。ただし、厚着にして汗をたくさんかかせることが良いわけではありません。本人が快適と感じられる温め方を心がけましょう。
    この時期は、体を温める食材・飲み物もおすすめです。
  • 熱が上がりきって汗をかきはじめたら
    ウイルスが減少して体温調節中枢の体温設定が低く変更されると、体は発汗を促し皮膚の血管を広げることで体温を下げはじめます。暑く感じ、汗をかき、顔色が火照ったようなときには、衣服を薄くして涼しくしましょう。
    タオルで包んだ保冷剤を、脇の下、首すじ、足の付け根などにあてて冷やしてもよいでしょう。

風邪で熱があるときお風呂に入っても
いい?

以前は湯冷めなどを気にして風邪を引いたらお風呂に入らないようにと言われていましたが、入浴が必ずしも風邪に悪影響を与えないことがわかってきました。入浴のしかたに気をつければ、お風呂に入ってもよいでしょう。

風邪を引いたときの入浴の注意点

  • 熱が高く体力が落ちている(ぐったりしている、元気がない)ときや、発熱のある乳幼児や高齢者は入浴しない
  • ぬるめのお湯(38~40度)で短時間にとどめる:体力を消耗する熱いお風呂は避ける
  • 湯冷めに気をつける(浴室や脱衣場所を暖める、湯上り後はすぐに服を着て冷えを防ぐ、洗髪をしない等)

風邪による発熱に対する市販薬でのセルフケア

発熱は体がウイルスなどと戦うための反応ですので、無理に抑える必要はありません。しかし、つらい発熱はとても体力を消耗してしまうので、体の負担を軽くするために、解熱鎮痛成分が含まれた市販の風邪薬などで発熱を和らげてもよいでしょう。発熱しているときには、頭痛や筋肉痛・関節痛などの全身症状もあらわれていることが多いですが、解熱鎮痛成分はこれらの症状も緩和してくれます。
風邪薬にはウイルスを直接抑える働きはありませんが、配合された複数の成分が風邪のつらい症状を和らげることで、体がウイルスと戦うのをサポートしてくれるのです。

市販薬を服用するときの注意点として、他の薬を服用している方、持病のある方、妊娠中の方、その他に心配なことがある方は医師や薬剤師や登録販売者に相談することも大切です。また、市販薬を服用しても発熱などの症状が長引く場合は、原因を調べて適切な治療を受けるために、必ず医療機関を受診するようにしましょう。

こんな発熱には要注意!風邪による発熱ではないかも

風邪による発熱では高熱になることは少なく、発症から2~3日ほどで解熱することがほとんどです。下記のような場合は、風邪による発熱ではない可能性があるため、早めに医師の診察を受けるようにしましょう。

こんな発熱は、風邪ではないかもしれません

  • 38度以上の高熱(インフルエンザなど他の感染症の可能性)
  • 激しい頭痛や強いのどの痛みがある
  • 息苦しさ(呼吸困難)や長引く咳がある
  • 皮膚に赤み(紅斑)や水ぶくれ(水疱)などがあらわれた
  • 風邪症状が軽快したころに再び発熱した
  • 微熱や倦怠感が長く続く

風邪を引きにくくするには?
正しい予防方法とは

ウイルス感染を防ごう

風邪の原因ウイルスは数百種類とも言われ、くり返し新しいウイルスに感染してしまう可能性があります。風邪を引きにくくするには、ウイルスが体に侵入することを防ぐ、マスク、手洗い、うがい、人混みを避けるなどの感染防御策が有効です。

体の免疫力を高めよう

ウイルスが鼻やのどに侵入しても、体の免疫が働いてウイルスの増殖を許さずに排除することができれば、風邪は発症しないか軽い症状ですみます。風邪を引きにくくするためには、体に備わった免疫力を高めることも大切です。

免疫力を上げる「抵抗力アップ策」

  • ゆっくり眠り、運動を習慣にする
  • バランスの良い食事を摂る
  • ストレス解消を心がける
  • 禁煙

最後に

新型コロナウイルス感染症は、発熱や咳など風邪と見分けのつかない症状ではじまりますが、風邪よりも症状が長く続くことが特徴です。新型コロナウイルス感染症の流行期に風邪症状がみられたら、外出を控えて自宅療養を行います。一般的な風邪であれば発症後3~4日で軽快しはじめますが、息苦しさ(呼吸困難)・強いだるさ(倦怠感)・高熱などがあらわれた場合や、風邪症状が4日以上続く場合には、かかりつけ医または「新型コロナウイルス 受診・相談センター」に電話相談したうえで案内に従って医療機関を受診しましょう。なお、持病をお持ちの方や高齢者、肥満、妊娠後期などの重症化しやすい方は、軽い風邪症状でも早めにかかりつけ医に電話相談してください。

参考資料

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MAT-JP-2400738-1.0-03/2024 最終更新日:2024.03.01

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  • ※ 注意書きをよく読み、目的に合わせてお使いください。
  • ※ これらの医薬品は、「使用上の注意」をよく読んでお使いください。アレルギー体質の方は、必ず薬剤師、登録販売者にご相談ください。