世界の街の薬屋さん
英国の薬屋さんはどんなところ?
大英帝国の歴史がある英国では、通常の薬以外に、「オルタナティブ・メディシン(代替医療)」と呼ばれるハーブなども店頭に並んでいます。
英国の薬剤師になるためには、大学で4年間の薬剤修士(Pharmacy degree:MPharm)過程を修了し、修士号を取得する必要があります。修士号を取得後、地域薬局または病院薬局にて1年間の実習(プレ・レジストレーション・トレーニング:登録前実習)を受け、その後試験に合格し、全国薬剤師協議会(The General Pharmaceutical Council’s:GPhC)に登録しなければなりません。
その他に薬局により、「ファーマシー・テクニシャン」、「ヘルスケア・アシスタント」、「ディスペンシング・アシスタント」などと呼ばれる人もいますが、いずれも薬剤師の監督のもとに働くこととなります。
1968年の英国薬事法では英国で販売されるOTC医薬品は2種類に分類されています。「自由販売医薬品(GSL:General sales list medicines)」と「薬局販売医薬品(P:Pharmacy medicines)」です。「自由販売医薬品」は、新聞販売店、スーパー、ガソリンスタンドなどの薬剤師のいないお店でも販売できる医薬品であり、薬局で販売されているものよりも、小さいパッケージのものが販売されています。「薬局販売医薬品」は、薬剤師さんがいる薬局でしか販売できない医薬品で、薬剤師の監督下で販売されなければならないものです。なお、処方箋が必要な薬は、「処方箋医薬品(POM:Prescription only medicines)」と呼ばれています。
英国の首都ロンドンは国の南東側の盆地に位置しており、グレーターロンドン庁公式資料によると、2009年の時点でのロンドンの人口は、英国の全人口の12.5%の775万人とされています。中世、近代などの歴史が豊かで、古くからの航海に基づく多人種多文化の背景があり、ロンドンは人種のるつぼと言われるほど、インターナショナルな都市です。また、世界の上位観光都市としてもランキングされています。
ロンドンでは、バスや地下鉄が縦横無尽に走っており(バスは24時間走っている路線もあります)、商店の並ぶ道はハイストリートと呼ばれ、様々な種類の店が並んでいます。ロンドンは地域によって、雑然とした通りがあったり、落ち着いた通りがあったり、様々な雰囲気の顔を見せる都市です。
英国薬剤師協会(The Royal Pharmaceutical Society of Great Britain:RPSGB)の登録サービスマークに「グリーン・クロス」というマークがあります。グリーン・クロスは、その規定により薬局に使用が許可されます。英国では、登録されたグリーン・クロスのマークでなくても、緑の十字マーク=薬局のイメージがありますが、その他に、古く薬屋さんで使用されていたすり鉢・すりこぎや、ヒュギエイアの器(Bowl of Hygieia:蛇がからみついている杯の絵)、アスクレピオスの杖(Rod of Asclepius:蛇がからみついている杖)も、地域により薬屋さんのイメージがあるようです。
英国では、薬屋さんを指す言葉は、ケミスト(Chemist)、ファーマシー(Pharmacy)、ドラッグストア(Drugstore)があります。ロンドンでは様々な人種が居住するため、話をする人の文化的背景などによって使い分けられているのかもしれません。
「ケミスト」は、一般的なイギリス英語での「薬屋さん」のイメージがあります。OTC医薬品とともに処方箋を取り扱うことが多く、チェーン店では食品(サンドイッチやお菓子、ペットボトル入りの飲み物など)、衛生、美容、化粧品、ベビー用品を置いているところもあります。「ファーマシー」は、英国では一般的に調剤薬局を指します。病院の院内にある薬局部やスーパーマーケットの調剤薬局コーナーを指す言葉でもあります。ケミストの中の調剤薬局のコーナーも「ファーマシー」と表示されています。「ドラッグストア」は、元はアメリカ英語ですが、英国でも使われており、処方箋を取り扱う店とそうでないお店があります。薬類、衛生、美容、ベビー用品などの総合的なスーパーや商店のようなイメージです。
街の薬屋さんは商店街やショッピングセンターのいたるところにあります。OTC医薬品はファーマシー(調剤)のコーナーを持たない小さい店舗でも購入できます。大手の薬局チェーンでは、自社ブランドも多く置かれており、OTC医薬品のオンライン販売をしているところもあります。大型店舗になると、ヘアドライヤーや体重計などの電化製品や化粧品などの販売もみられます。また、クリスマス時期にはカードやギフトセットも置かれることがあります。
英国では、NHS(National Health Service:国民健康保険)により、GP(General Practice)と呼ばれる「かかりつけ医」に登録することが義務付けられています。医師にかかる場合は、まずGP(General Practice)に行くことになります。GPの診断により総合病院に行くように指示された場合は、その病院に行き診察・処方を受けます。
英国の医療用医薬品はどんな種類であれ、支払う金額は一律7ポンド40ペンス(2011年11月現在)に決められています。60歳以上、16歳以下、16~18歳でフルタイムの学生など無料になる場合もあります。何度も同じ処方箋薬を買う場合は、リピートプレスクリプションという長期にわたって処方しやすいシステムがあります。また、一定期間に特定の個数以上の薬を購入する場合は、定額を先払いするプリペイメントシステムで、割安に購入できたりします(地方によって制度に違いがあります)。
医療用医薬品はやはり専門性の高い印象があり、軽い風邪や頭痛、その他の痛みやアレルギー症状改善のためには、まずは手軽なOTC医薬品を利用するということは一般的かと思います。
参照)医療用医薬品の購入のしくみ:National Health Serviceサイト
「薬箱」というより、「薬戸棚(Medicine Cabinet)」や「薬引き出し(Medicine drawer)」のように、引き出しや戸棚などに絆創膏や痛みどめ、咳止めシロップなどを置いている人が多いと思います。私も薬箱は持っておらず、引き出しの中にいれています。いざというときのため、「救急箱(First Aid Kit)」を家庭に置く人もいますが、車に常備するように政府からのアドバイスがあったり、職場でも、救急箱を置くことが義務付けられていたりします。
GP(General Practice)という、かかりつけ医院の制度はありますが、「かかりつけ薬局」の観念はあまりないように思います。家や職場の近くにある「行きつけの薬屋さん」の意識はあるのではないでしょうか。
セルフメディケーションそのものの意識について言えば、英国での意識は高い方だと思います。ここ数年NHSの負担を軽減するためにセルフメディケーションは積極的に進められているような印象もありますし、より医薬品を買いやすいようにする再分類もみられ、西洋医学以外のオルタナティブ・メディシンの利用も見られます。個人的な印象では、病院での入院もすぐに退院を求められ、自宅での療養が求められているようです。
英国では、多文化を背景に「オルタナティブ・メディシン」呼ばれる非西洋医学が発達しており、大英帝国時代に様々な医療技術や薬草が伝えられたためといわれています。ハーブを原料とした薬(herbal medicine)も数多くあります。また、その他に古くから英国やヨーロッパ内で伝えられてきた療法も「オルタナティブ・メディシン」と呼ばれています。
残念...。もう一度挑戦してみよう!
残念...。もう一度挑戦してみよう!
英国の伝統料理のシェパードパイは、ラム肉などとマッシュポテトなどで作ったパイです。
日本では、具合の悪い時に食べたいとはあまり思わないものかもしれませんが、総合病院に入院した時に出されることがあります。
やわらかく食べやすいからかもしれません。
オートミールは、エネルギー源として人気があります。オート麦はほとんどのスーパーや健康食品店で購入できます。これをミルクまたはお水を使ってお粥のような感じになるまで鍋で熱し、味付けに砂糖・ハチミツ・フルーツなどを好みでいれます。
風邪をひいた時、子供にはレモンと蜂蜜のあたたかい飲み物が勧められますが、大人は、ウィスキーのお湯割りにレモンと蜂蜜をいれたホット・トディーというものを飲んだりします。地域によってこれにクローブやシナモンなどを加えたりします。
国名: |
英国(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国) |
面積: | 24.3万平方キロメートル(日本の約3分の2) |
人口: | 6,180万人(2010年) |
首都: | ロンドン |
首語: | 英語(ウェールズ語、ゲール語等使用地域あり) |
(1) Is there a hospital nearby ? ...意味:「病院はどこにありますか?」/ 発音:「イズ ゼア ア ホスピタル ニアバイ?」
(3) Could you call an ambulance for me? ...意味:「救急車を呼んでもらえますか?」/ 発音:「クジュウ コール アン アンビュランス フォー ミー?」