(4)錠剤表面のコーティングと中間製品試験

表面のコーティングを効率よく

糖衣をコーティングするドラム

糖衣をコーティングするドラム

錠剤の形になった薬は、次にその表面をコーティングしていきます。錠剤は、大きく分けるとそのコーティングの種類により、「糖衣錠」と「フィルムコーティング錠」の2種類に分けられます。その名の通り表面に糖分を施す糖衣錠は、薬の苦みを抑え、表面を美しくするメリットがあります。多くの錠剤において使用されているフィルムコーティングは表面がざらつく反面、工程がシンプルで省エネ型と言え、薬の性質により使い分けています。

糖衣は、錠剤を温めて糖のスプレーをかけ、乾かし、またスプレーを一定量吹きつけ、乾かし、を何十回と繰り返す工程です。通常は3日という非常に時間のかかる作業ですが、私たちは製造機器メーカーとの協力で、1日以内という業界内でも短時間で仕上げる工法の開発に成功しました。コーティングが終了した錠剤は次に異物が付いていないか、6台のデジタルカメラを使って1粒1粒を細かく確認します。カメラ画像で、50ミクロンという人の目では見分けられないような微少な物質まで「コンピューターの目」で感知し、取り除きます。指のわずかな油分でさえ発見する精度の高さです。

多くの工程では無人運転のプロセスを取り入れており、生産に必要な人は最低限に抑えられています。自動生産システムを通した生産性の高さが、効率と安心・安全を生みだしています。

表面加工、新時代開く

SLS錠

SLS錠

「あれ、これは糖衣錠に似ているけど口に含んでも甘くないね」
そんな声が使用者から聞こえてくる、まるで糖衣のような光沢を持った錠剤が、2010年、この研究所で生まれました。「シルキーラスターシステム(SLS)」と名付けられたこの表面技術は、ざらざらした一般の錠剤と同じ原料を使いながら、配合比率の工夫で「シルクのような」輝きと滑りを実現させました。

一番の利点は、環境に配慮できることです。工程がシンプルになることで、排出する二酸化炭素の量が糖衣錠よりも8割抑えられます。表面のなめらかさで、錠剤ののみ込みやすさも期待できます。開発は10年がかり。今後、この技術を採用した製品を広げる予定です。

検査のエキスパートたち

検査のエキスパートたち

試薬を入れた試験管を見つめる、真剣なまなざし——。工場内の検査ルームは、スポイトから大型機械までさまざまな器具が並ぶ、検査のエキスパートたちの職場です。ここからゴーサインが出ない限り、どの製造工程でも次の段階には進めません。コーティングされた薬は、ビンやシートに詰める前に、全ロット*をサンプリングし、ここで必ず中間製品試験をうけます。

スタッフは早朝から、あらかじめ割り振られたスケジュールに沿って粛々と検査を進めます。一見個人個人の職人仕事に見えますが、検査の分担を綿密に計画したり、異常値が出たときは原因を何人かで考えたり、チームプレーの側面も大きい作業です。検査には時間がかかることも多く、夕方に帰宅前に検査装置を設定し、夜間自動で分析データを検出する場合もあります。

スタッフの専門性は高く、現場に立つまでに最低3ヶ月の研修が必要です。様々なメーカーや業界団体主催の勉強会に積極参加する社員も多く、こうした人材教育もエスエス製薬の品質への取り組みのひとつです。

※ロット:製造時の生産管理上の単位。同じロットで生産された製品は、同一条件で生産された製品とみなすことができます。
品質の管理は、ロット単位での確認が重要になります。