症状・疾患を知ろう
せっかくの旅行やレジャーが「乗り物酔い」のために台無しに…。そんな経験をおもちの方も多いはずです。「乗り物酔い」のメカニズムを理解して、しっかり対策を立てましょう。
乗り物酔いは、車や船をはじめとした乗り物などの揺れなどによって起こる症状のことで、「動揺病」とも呼ばれます。乗り物の種類により、車酔い、船酔いとも言われ、遊園地やテーマパークのアトラクション、ビデオゲームなどでも乗り物酔いを引き起こすことが知られています。
典型的な症状は、あくび、唾液の分泌増加、胃の違和感などに始まり、次第に気分が悪くなり、吐き気や嘔吐があらわれます。特に夏場は乗り物酔いによる嘔吐から脱水をまねくこともあるので、注意が必要です。
人には、平衡機能と呼ばれる姿勢を保つ機能があり、これは目からの情報、内耳からの情報(三半規管や耳石器からの揺れや回転、加減速などの情報)と体からの情報の3つを脳で調整しています。ところが人によっては、乗り物により目、内耳、体からの情報が日常と違うことにより脳が混乱し自律神経系の乱れを引き起こし、その結果、顔面蒼白、冷汗、頭痛、吐き気、嘔吐といった乗り物酔いの症状があらわれます。また、嗅覚からの不快感、精神的ストレスや“酔うかもしれない”という不安感も乗り物酔いの原因といわれています。
同じ"酔い"でも、お酒に酔ったときはアルコールの作用によって脳の活動が抑制されています。また、お酒で悪酔いしたときの嘔吐は、アルコールが分解される過程でできるアセトアルデヒドの作用によるもので、自律神経系の乱れによっておこる乗り物酔いとはまったくメカニズムが異なることがわかります。
睡眠不足やストレス、過労などを避け、体調を整えましょう。
乗る前の食べ過ぎは禁物ですが、空腹も逆効果です。消化の良い食事を適量とり、胃腸の調子を整えておきましょう。
バスは中央付近の通路側の席が揺れが少ないといわれます。電車では進行方向に向いた席に座りましょう。
視覚や嗅覚などへの刺激は、平衡感覚への刺激と作用し合って、乗り物酔いを助長します。遠くの景色を眺める、おしゃべりをするなど楽しい時間を過ごすように心がけましょう。
乗り物酔いの薬は、乗る30分前に予防的に服用するのが効果的。また、酔ってからでも効果がありますので、乗り物酔いになってしまったときの対策としても有効です。
■抗ヒスタミン作用(成分例:マレイン酸フェニラミンなど)
嘔吐中枢を抑制し、吐き気、めまいなどの症状を予防、緩和します。
■副交感神経遮断作用(成分例:スコポラミン臭化水素酸塩水和物など)
副交感神経の働きを抑制し、自律神経系のバランスを正常化します。
■胃粘膜局所麻酔作用(成分例:アミノ安息香酸エチルなど)
胃に直接作用し、胃粘膜の知覚神経を麻痺させることで、嘔吐を抑えます。
富山大学医学部 耳鼻咽喉科 耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座 教授
富山医薬大卒。2012年9月から現職。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本めまい平衡医学会専門会員、日本めまい平衡医学会めまい相談医。
【所属学会】Barany Society、日本耳鼻咽喉科学会、日本めまい平衡医学会、日本耳科学会、日本聴覚医学会、耳鼻咽喉科臨床学会、日本臨床神経生理学会、日本自律神経学会
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