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花粉症のはなし
~原因とメカニズム~
花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)の代表的な症状としてあらわれるのは鼻水、鼻づまり、くしゃみなどの3大症状に加え、目のかゆみなどです。花粉症とそれぞれの症状を引き起こす原因とメカニズムについてご紹介します。
花粉症とは、鼻腔内に入ってきたスギ等の植物の花粉に対する免疫反応によって鼻水等の症状が引き起こされることをいい、季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれます。メカニズムとしては、アレルゲンが鼻腔内の粘膜に付着すると、体内に抗体が作られマスト細胞という細胞に結合します。その後再びアレルゲンが侵入すると、マスト細胞からアレルギー誘発物質が放出されることにより鼻水等のアレルギー反応が引き起こされます。
また、花粉症の他にダニなどのアレルゲンによって引き起こされる鼻炎は通年性アレルギー性鼻炎と呼ばれます。最近では花粉症と通年性アレルギー性鼻炎の併発や、複数の花粉に反応する花粉症など、ほぼ一年中症状に悩まされるという人も少なくありません。
花粉やハウスダストなどのアレルゲン(抗原)が鼻粘膜に付着
アレルゲンがマスト細胞の抗体とくっつく
再びアレルゲンが侵入すると、ヒスタミンなどのアレルギー誘発物質が放出
鼻水、鼻づまり、くしゃみ等のアレルギー反応を起こす
イメージ図
鼻に花粉が入ると、下図のような仕組みで症状があらわれます。
1 空気中に浮遊する花粉が鼻に侵入
2 花粉が鼻の細胞内のマスト細胞にくっつくと、ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサン、PAFなどの物質を放出
3 放出されたヒスタミンなどの物質が鼻の神経や血管を刺激して、鼻炎の諸症状を発症
イメージ図
目に花粉が入ると、下図のような仕組みで症状があらわれます。
1 空気中に浮遊する花粉が目に侵入
2 花粉が目の粘膜内のマスト細胞にくっつくと、ヒスタミンなどの物質を放出
3 放出されたヒスタミンなどの物質が目の神経や血管を刺激して、目の諸症状を発症
イメージ図
アレルギー性鼻炎は2種類あるのをご存じですか?アレルギー性鼻炎は好発時期によって2つに分類されます。
通年性アレルギー性鼻炎は、季節と関係なく年中続くアレルギー性鼻炎です。症状を引き起こす原因物質(アレルゲン)は人によってさまざまですが、ハウスダストやダニ・ペットなどが主な原因とされています。
季節性アレルギー性鼻炎を引き起こす花粉は、日本では約60種類も存在すると報告されています。そのため、鼻炎を引き起こす花粉は一年中飛んでおり、春先のスギやヒノキだけでなく、初夏のシラカンバ、秋のブタクサやカナムグラなど、地域や季節によって異なります。
最も患者数が多いのは春のスギ花粉症ですが、季節を問わず他の花粉症を併発することも珍しくありません。ある調査報告では、スギ花粉症患者の70%もの人が、季節を問わずアレルギー性鼻炎症状が現れるといわれています。春だけではなく秋にもアレルギー性鼻炎症状が現れる方は、秋の花粉が原因かもしれません。
花粉症を発症する人は、遺伝的にアレルギー体質であることが主な原因として言われていますが、それ以外に何か原因はあるのでしょうか?
まず、一般的に挙げられるのが食生活の変化です。なぜなら同じ地域に住んでいても、お年寄りには花粉症の有病率が少ないからです。今と比べて、インスタント食品やスナック菓子などがほとんどなかった時代に食されていた昔からの和食に、アレルギー体質になりにくい要素があるのかもしれません。次に自律神経を乱す睡眠不足や不規則な生活、そしてストレスも原因と言われています。
生活習慣を見直し、規則正しい生活を心がけることで花粉症が楽になるかもしれません。
また、花粉の飛散が多い地域では、花粉症の有病率も高い傾向にありますが、排気ガスの影響も受けていると言われています。
花粉の飛散量が同じでも、排気ガスの多い地域の方が花粉症になる人が多いのだとか。排気ガスのなかに含まれる微粒子と一緒に花粉を吸いこんでしまうと、アレルギー反応が出やすくなると言われています。また、アスファルトにも要注意です。花粉が飛んでも土に吸収され、再び舞い上がることの少ない田舎と違い、アスファルトでは落ちた花粉が何度でも風に舞い上がり、空中を飛んでしまうので、花粉を吸い込みやすくなると言われています。そのため、大きな道路の近くや都会に住んでいる人は普段からマスクをするなど特に注意が必要です。
発症していない人だけではなく、発症した人は症状を重くしないためにも、外出時には、とにかく花粉に触れないことが大切です。サングラスやメガネ、マスク、帽子、そしてツルツルとした花粉を落としやすい服装を心がけましょう。帰宅したら、玄関に入る前に花粉を払い、うがいや顔を洗う習慣をつけましょう。
それでもつらい鼻水やくしゃみにはアレジオンなどの市販薬を利用しましょう。
2008年に行われた全国的な鼻アレルギー(花粉症)の有病率調査では、国内の約4割の人がアレルギー性鼻炎と答え、花粉が原因の鼻アレルギーは3割にものぼることが分かりました。そのなかでも、スギを原因とする花粉症は26.5%と、1998年の調査結果に比べ10ポイントも増加し、約4人に1人が発症しています。全国でも特に患者が多いと言われる東京都の調査では、スギ花粉症の有病率は3割近くにのぼります。
また、30・40代に多かった花粉症が、近年では花粉の飛散量の増加とともに、低年齢化が進み、若いうちに発症する人が増えています。10代でも約3人に1人が、10代以下も約15%近い人が花粉症を発症していたことが分かりました。2008年の調査から約10年近くたった現在ではさらに増加しているものと思われます。
日本では60種類もの原因花粉があり、スギやヒノキだけでなく、シラカンバ、ブナ、ハンノキ、ケヤキ、コナラ、ブタクサ、ヨモギなど、1年中、何かしらの花粉が飛んでいるので注意が必要です。
今まで大丈夫だった人も、突然、発症することもありますので、「自分は大丈夫」と思わず、しっかり対策を立て予防していきましょう。
出典:鼻アレルギー診療ガイドライン2020より
ここまでの内容は日本医科大学大学院医学研究科 頭頸部・感覚器科学分野 教授 大久保先生に監修いただきました。